リスクとコンプライアンス

第952号

厚生労働省は、12月を「職場のハラスメント撲滅月間
と定め、ハラスメントのない職場づくりを推進するため、
集中的な広報・啓発活動を実施することとしています。

皮肉というか、宝塚歌劇団に所属する女性が
死亡した問題が大きく報道されました。

歌劇団側の記者会見では、「いじめや
パワハラは確認できなかった」という
ことで、遺族側とは真っ向から認識が
食い違っている状況です。

確かに、法律の基準で言えば
ハラスメントとは言い切れなかったり、
証明できないところがあるのかも
しれません。

歌劇団の構造上の問題としては
言及せず、上級生と死亡した
女性の間の個別の事案として、
形式的な調査の域を越えていない
のが残念です。

ハラスメントはそもそも
組織の問題です。

そう捉えれば、
何をしたか、しなかったか、
という法律の範囲の対応に
とどまらず、

リスクと社会的責任を含む、
広義の意味のコンプライアンスの
視点から、今回のことを考えることが
重要です。
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職場のパワーハラスメントとは、
職場において行われる

1.優越的な関係を背景とした言動であって、
2.業務上必要かつ相当な範囲を超えたものにより、
3.労働者の就業環境が害されるものであり、

1から3までの3つの要素を全て満たすものをいいます。
 (厚生労働省の明るい職場応援団より)

経営側がパワハラと業務上の指導の線引きが
困難だ。とするのは、“ 業務の適正な範囲を超えて ”
の部分の判断の難しさです。

ハラスメントはパワハラに限らず初動が大事です。

こじらせる前に、そもそも何をすべきなのでしょう。
通常、職場で起こるパワハラの最初は、
「どうしてわからないんだ」
「どうして出来ないんだ」という、

・人と人は違う
・わかりあえなくて当然

この“そもそもの”前提条件が
わかっていないことによる行き違いです。

自分が正しいと思うものがすべてであり、
それがわからないほうがおかしい
という考えは、もはや許容されません。

チームビルディングは
人と人が違うという前提で組織作りを
始めます。

取り組むべきことは
“人と人は違う“
だからこそ
相手が何を思っているのか
ここに『配慮』して、
コミュニケーションをする。

このことに気づける
組織を作っていくことが
ハラスメントのない組織づくりには
必要な視点です。

そう考えれば、
”配慮”のない一時代前の価値観が横行している
環境を見過ごしてきた歌劇団の責任は
重いと言わざるを得ません。

今の時代は、
利益の追求だけでなく環境や人権に
向けて配慮した行動を実践し
法令遵守に限らず社会的なルールを
守ることが求められています。

企業の規模には関係ありません。

これがコンプライアンスであり
社会的責任だと思います。

「どう見られているのか」
「何を期待されているのか」

それは社会全般(顧客や株主だけで
なく、従業員も含む)に対しての
責任です。

これからの時代は、ますます
意識する場面が増えてくると
思います。

宝塚歌劇団という人に観られる
ショービジネスであれば
なおさらです。

12月で辞任する理事長が
最後に言っていた
「小林一三の創立の精神に立ち返り、
ひとつひとつ改革を進めていく」

令和の時代に果たして、立ち返ることが
改革につながるのか疑問です。

なぜなら、これまでのやり方の
延長線上にはないことを始める
ことが改革だからです。

少なくともコンプライアンス経営を
目指すなら、そこには表裏一体である、
リスクマネジメントの推進も忘れては
ならないと思います。

リスクマネジメントの初手、初動は
”リスクの確認”
”リスクの測定”です。

何をリスクと認識するのか、
ここを見誤らないように
自ら明らかにできなければ、
110年の歴史とこれからの未来を
守れません。

企業においては、
・生産性の低下
・訴訟リスク
・採用への影響と離職率
・ブランドイメージの低下

これらの負のコストを抱えた
ままでは経営していけません。

問われているのは、
「どう見られているのか」
「何を期待されているのか」

見方を変えれば
「自社が果たすべき役割」
「何を目的として事業をしているのか」

つまり、これはミッションです。

ミッションを果たすことが
会社の未来を守ることにも
なるのだと思います。

お読みいただきありがとうございました。
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