教えることだけが教育ではありません

第823号

先日、オンラインで、同じ人事評価制度を作っている
経営者のコミュニティの全国大会に参加しました。

参加した理由のひとつが、記念講演して
くださった有限会社原田左官工業所
原田社長のお話しを聞いてみたいと
思ったからです。

職人の世界は
「見て覚える」「技を盗む」
という教え方だと思っていました。

原田社長は、10年ほど前から、
「モデリング訓練」という教育システムを
実践しています。

・とにかく見て真似る、繰り返し真似る

・「見て習う」訓練を積む

・見るから観るへ目線を変える訓練

サポートはするけれど
とにかく見て、真似して、体験してみて
自分で”気づいて”もらうこと重視です。

教育とは、教えること。
だけでは、ありません。
———————————————————————

原田さんはモデリング訓練の体験を通じて、
職人の入り口に立たせることが会社の役割
だと言います。

その道の一流と言われる人が説明
しながら塗っているビデオをお手本
にして、

ひたすら真似るモデリング訓練。

入社して1か月は見て習う期間(見習い)
として、この訓練で基礎を身につけます。

現場はどれも同じではないので、
真似た体験だけで通用するわけでは
ないのですが、

この先自分で学んでいくためにも

手順やヒント
先輩のどこを観察して学べばよいのか

掴むことができます。

そして、

一人前となった自分の姿をイメージ
できたうえで現場に入ることで、
理想と現実のギャップで
辞めてしまうことを防ぐ効果も
あります。

社員教育も左官職人が壁を塗る
一つの現場と同じ、

という考えから

社員教育は仕事の工程管理と同じ
ように、計画たてて取り組んでいます。

『年明け披露会』という仕組みを作り、

年季が明ける、即ち一人前に
なったことを祝う制度があります。

この期間を4年と設定し、
年季明けの際には、社員のご家族も
交えて盛大なお披露目会を開きます。

4年で一人前になれる。
そうすれば、中規模の現場を
取り仕切れるようになる。

そう思ってもらうことが大事なんだと
言います。

どの仕事もそうでしょうが、
職人の世界は奥が深いです。

だからこそ、最初の入り口のところで
つまづかないように、

小さな目標や到達イメージが
大事なんだと思います。

この会社にしても
最初は、現場で見て覚えて、という
ものだったのが、

次には、
いろいろ教えるようにしてみたら、
注意されているみたいだと言われ

「モデリング訓練」にたどり着きました。

自分で体験して、
自分で気づいてもらう

教えられるより、自分で気づくほうが
学びは大きいものです。

塗り方を教えることよりも

会社は、

どう育ってもらうか、という
設計図を描くことが大切、

ということに思い至ったんだと
思います。

これがあるから、
教える時間が取れなくても
育てることをあきらめずに
取り組めたんだと思います。

先輩職人も最初は、
訓練受けるだけで給料をもらうのか、
とか、

同じ世代が仲良く塗り方を
教え合いながら学ぶ姿を

遊んでいる、と否定的だったようですが、

左官職人の基本を覚えてから
現場に入るほうが、仕事覚えが
スムーズだとわかってくると、
風向きが変わりました。

記念講演の最後のスライドは

『左官は今でも人が塗って仕上げる
だから人を育てる』

というものでした。

最盛期には30万人いた職人が
現在は5万人という現状への
危機感と、経営者の信念が、

直接教えなくても、
自分で育つ教育の仕組みを
作り出し、

高齢化が進む業界で、
49名中9名の20代が働いて、
ママさんの職人も2名いる。

という結果につながっています。

お読みいただき、ありがとうございました。

2019年1月に、NHKのドキュメンタリーで
この会社を初めて知りました。
そのとき書いたブログです。

部下は ”任せて育てる”
https://www.suzukey-stone.com/2019/01/10/271/

お読みいただき、ありがとうございました。

セミナーのご案内 ━━━━━━━□■

「評価制度の作り方」8月25日(zoom開催)

“運用できる評価制度の作り方”を、
組織づくりの視点と、ゲーム体験を
通じてお伝えします。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

このブログを編集して、
メルマガを平日2回お届けしています。
ご希望の方は、 下記フォームよりご登録ください。

メルマガ申し込み
 

関連記事

コメントは利用できません。