就社の終焉

第398号

トヨタ自動車の豊田章男社長が13日、
日本自動車工業会の会長としての会見で

「雇用を続ける企業などへのインセンティブが
もう少し出てこないと、終身雇用を守っていくのは
難しい局面に入ってきた。」
という「終身雇用」に言及した発言をしたあと、

安倍総理は「元気で意欲のある高齢者に
経験や知恵を社会で発揮してもらえるように
70歳までの就業機会の確保に向けた
法改正を目指す」

と、「70歳までの就業機会の確保」に向けた
方針を示しました。

 

70歳まで働いてもいいですよ、というニュアンスだが、
労働力人口の減少を解消するため、元気な人は
働いてください。ということであり

年金支給年齢をずらすために、70歳まで働いてほしい
ということが本音なのは、皆がわかっていること。

70歳だろうと何歳だろうと働きたい人が
働ける社会であるまえに、

働かないことを選択した人が安心して
生活できる環境を保証することが国が
考えることだと思うのですが、そこには
言及していません。

それも含めて、多様性の時代なんですが、
どうも、画一的な対応しかできない傾向が感じられます。

 

国としては、70歳まで安心して
働いてもらうために、終身雇用が
くずれるのは望まないと思うのですが

経済界はそれを承知で、「終身雇用」の終焉
をこぞって宣言し出したのはなぜでしょう。

例えば、トヨタの売上をけん引するのは
欧州、アジア諸国です。

日本では車離れが進んでいて、
このままでは、先行き不透明で、
減税など内需拡大策を国が講じなければ、
終身雇用の維持は難しいということが
言いたいことなのでしょう。

終身雇用は、単に優秀な社員を
採用できるということだけでなく、
囲いこんで、その会社で(のみ)
通じる能力形成を行ってこれました。

優秀な社員はその会社で優秀であればよく、
他社でも通用する能力を求める必要はありません。

終身雇用と引き換えに、
会社は絶対的な指揮命令権を持ち

「正社員でいれば安心」
「きつくても、頑張っていればいつか報われる」
という幻想のもとに、

一定の会社は、過酷な労働[ブラック企業]を
強いてくることもありました。

「どこまで働けばよいのか」
「何をもって貢献していけばよいのか」が
明確でなくても、長時間労働を命じられて
きてしまったということがあります。

よって、終身雇用を手放すということは、
これらのうまみを会社は手放すことでもあります。

では、これから何が終身雇用という付加価値に
代わって、会社と労働者を繋ぐのでしょうか。

会社に就職する「就社」ではなく
どんな仕事のスキルを持っているか、という
仕事中心の「ジョブ型雇用」に移行していくと
思われます。

経団連も導入に積極的な ” ジョブ型雇用 ” とは

年功序列ではなく、責任や職務内容を
明確に定めた雇用契約を結び、
専門性や責任等職務のレベルに応じて
処遇するというもの。

 

今年の春闘でトヨタ自動車は、
組合員一律の賃上げから脱皮し、
個人の役割に応じた賃金体系への
転換姿勢を打ち出しています。

 

人を採用するのが難しい
中小企業では、
終身雇用の方針を変更して、
無くしてしまうというのは、
今はまだ、現実的ではないでしょう。

でも、今の現有戦力で、どれだけ生産性を
上げられるかにチャレンジしており、
何をもってその会社は評価しているのか。
何を必要としているのか。

これを会社は言語化して伝える責任はある
のだと思います。

 

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