伝えたい内容をルール化するときに気をつけたいこと

第759号

お客様のところで新評価制度の
社員説明の練習に参加したり、

あるいは、

ビジョンづくりのお手伝いをしたり、

伝えたい内容をルールに落とし
込む場に同席させていただく
機会があります。

どうしても具体的にわかりやすく
を大事にしたくなるのですが、

具体的であればよい、

とは限りません。

具体的に説明されると、
その内容に思考が引っ張られすぎて、

確かに、そうそう

私もそう思う

と、自分も以前から
そう思っていたような
錯覚をすることもあります。

それほど、
具体的
わかりやすい
というのは

影響力があるのですが、

”わかりやすい”という
具体的な表現を
ルールに落とし込めば

再現性あるものになる
というわけではありません。

具体的表現では
再現性にはならない

今日は、そんなお話です。

—————————————————————-

同一労働同一賃金への対応として
それぞれの責任や役割の違いを
明確にした

「等級基準書」や
ジョブ型雇用の広まりで

「ジョブ・ディスクリプション」
(職務記述書)

などを作る会社が増えてきました。

等級制度とは人事制度のなかの

仕組みのひとつで、社員を能力・

職務・責任などで各等級ごとに、

区分分けすることです。

たとえば、ある等級の能力として
◆———————————————-
業務に関する一般的専門知識・技能と
関連業務に関する一般的実務知識を有し、
職場に関する月間目標の設定と推進などの
業務を、関係者との折衝、その他諸問題の
発見・解決を的確に行いながら遂行するとともに、
~ 以下省略。
◆———————————————-

このように書いてあると、どうでしょう。

等級基準書は抽象的で
よくわからない

これでは、等級を決められない

という声が出てくるかもしれません。

確かに、上記のような書き方だと、

「結局どういうこと?」

と思ってしまうこともあります。

そう感じるのは、
『抽象的』だからではなく、
『曖昧』に思えてしまった
からです。

抽象的と曖昧は同じでは
ありません。

抽象的の意味は

いくつかの事物に共通なものを
抜き出して、それを一般化して
考えるさま

です。

ですから、

具体的な事例をより一般化
した事象に置き換えたものが
抽象的と言われるものです。

たとえば、

料理人が塩を素材の近くから
ふりかければ濃い味がつくのが
”具体的”だとすると

高い位置からふりかけて
広範囲にまんべんなく
いきわたるようにすることが

”抽象度”を上げる
ことだと言えます。

先ほど挙げた等級基準書の内容も、

具体的事例を挙げたとき

その事例の抽象度を上げた
ものがこの文章であるなら、

十分使えるものだと言えます。

私は、この等級の基準を

同一労働同一賃金への対応
もあって、

役割の違いに焦点をあてて
作成することがあります。

具体的に役割を書きすぎると
特に中小企業の製造業などは
多能工だったり、

一人で複数の業務をこなして
いることも多く、

役割から外れたことも
実際にはやっている場合
があります。

具体的に書くということは
状況をイメージしやすいがゆえに、

等級の基準と
実態の整合性がとりづらい、と

現場が困惑してしまうこと
にもなりかねません。

だからと言って、
その都度、書き直す
というのは、

現実的ではありません。

もちろん、実際には
抽象度の上げる加減が
難しいわけですが。

こうして考えると
具体性よりも

解釈の範囲が広がる

抽象的な表現ができれば
再現性があって有効

と、言えるのではないか
と思います。

そのうえで、
具体的には、

と問われたら

たとえばこの職種なら、
こういう仕事の役割

というように、説明できる
という順番です。

抽象度と曖昧の違いは
職務によって挙がる

それぞれの具体例を
『点』に例えれば、

それらを、つなげた『面』に
なっているのが

抽象度が上がった表現と
言うことができます。

伝えるという
コミュニケーションの場面では

最終的には具体的な説明を
することになるとしても、

それを他の局面でも
適用できるように
なる(再現性)ために、

・ものごとを抽象的に捉えること

・具体的事例を出して説明できること

この両方の能力が備わっているとき

伝えたい内容を、
ルール化(常に変わらず持っている考え)
することができるんだと思います。

お読みいただき、ありがとうございました。

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