社員に説明できる、賃上げを可能にする方法

第996号

 賃上げにはまず、業績を上げて
その結果賃金が上がるということを
理解してもらうためにも

たとえば3%と決めたとき、
それを実現するために増やすべき粗利、
あるいは売上はいくらになるかを算出して、
その金額を達成できれば賃上げ3%が実行
できる、という伝え方が大切です。
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賃上げでモチベーションが上がった
り、定着率が上がるものではないとは
思いますが、

人の採用と定着のために
中小企業でも、これからも賃上げ傾向
が可能な限り、続くと考えると、

まず業績をあげて
その結果、賃金が上がる
という順番をしっかり説明
できることがますます
大切になってくると思っています。

そのためには伝え方が重要です。

今後も労働力人口が減少し、
政府主導で物価を上回る賃上げ
の実現を目指さなければならな
い空気のなかで、

・人件費を予算化する
・業績を上げて→賃金を増やす

ということは、

人事評価制度の設計を支援し始めた
当初から、支援先に伝えてきたこと
でもあります。

それは、

どうすれば賃金が上がるのか、

主体的にどう行動すればよいのか
を伝えることが、

会社の業績向上にもつながると
考えているからです。

今、その業績を作るための、
そもそもの人材確保のために
賃上げが避けられない状況に
おいては、

ますます伝える必要を感じる
とともに、伝わらないもどかしさ
も感じます。

なぜなら、

社員の方は、会社の業績が厳しい
ことを理解していても、

「自分たちのこれまでの評価に対
しての当然の支給」と考え

経営者の方は
厳しい状況でも支給している
ことを社員は理解してくれて、

「これからも会社で頑張って
くれるだろう」という期待を
込めて支給しています。

社員として
経営者として

視点の違いによる行き違いをなく
すために、伝わる説明が必要だと
感じています。

賃上げをたとえば3%と決めたとき、

それを実現するためには
どういう経営目標をたてれば実現
できるのか、です。

3%の賃上げを決めるなら、
増やすべき粗利、あるいは売上
は、いくらになるかを算出して、

その金額を達成できれば賃上げ
3%が実行できる、という伝え方
をすれば

経営目標と自身の処遇のつながり
が、イメージできます。

これまでも会社の人件費と
家計の収入を結び付けて説明
したりしてきたり、

昇給原資を増やす方法として
伝えたりしてきました。

経営者の方にうかがっても
賞与や昇給を出せる損益分岐点
の経営数字を把握しておられたり、

粗利を所定労働時間で割って、
時間当たりの労働生産性を
幹部で共有している会社も
あります。

それらの数字がすでに手元に
あれば、3%賃上げに必要な
数字も割り出せます。

ただ、それをどのように社員
の方と共有するのかが難しい
ところです。

今の時点で私なりに、
伝わりやすいと思う方法で、

”どういう経営目標をたてれば
3%賃上げが実現できるのか”
説明したいと思います。

この経営目標を、事業年度の
最初に目標に設定して達成で
きれば、

社員は自分たちの力で昇給を
勝ち取ることができると考える
ことができるようになります。

必要な数値は

1.昇給合計額

賃上げ率3%だとすると

25万円の給与なら7,500円
30万円の給与なら9,000円
40万円の給与なら12,000円
会社全体の平均月収を25万

とすれば、

20人の会社なら、
25万×3%×20人=15万円/月の
アップです。

2.総額人件費÷所定内賃金

まず、総額人件費を出します。

10,000円賃上げすると
会社が必要な人件費は
10,000円ではなく、関連する
人件費も増えます。

で、それらを合わせて「総額人件費」
と考えます。

この総額人件費が、所定内賃金の
何倍かを求めます。

(採用時に人件費がいくら増えるか
人事総務でも計算されていると思
います。それと同じです)

それをここでは「総額人件費」と
呼びます。

仮にそれが1.6倍なら、
10,000円賃上げすると、
総額人件費は16,000円増える、
ということになります。

3.労働分配率

 仮に50%とします。

4.粗利率

 仮に20%とします。


これらの数値を使って賃上げ3%
を可能にする増やすべき粗利や
増やすべき売上を求めていきます。

□昇給合計額/月×12か月×(総額人件費÷所定内賃金)
=『昇給によって増える年間人件費』

例 15万円×12か月×1.6=2,880,000

□増える年間人件費÷労働分配率
=『増やすべき粗利益額』

例 2,880,000÷50%=5,760,000

□増やすべき粗利益額÷粗利益率
=『増やすべき売上額』

例 5,760,000÷20%=28,800,000


3%の賃上げに必要な
増やすべき粗利、あるいは
増やすべき売上を伝えることで
皆が目指す目標が明確になります。

経営目標と処遇がつながります。

勿論、この数字は会社全体ですから
これを部署単位あるいは個人単位まで
落とし込めれば、なおさら身近になり
ます。

①目標を達成する 
②賃上げ3%が実行される

という順番を、感覚的に理解して
もらうことができます。

あとは、これを達成するために
やるべきことが社内で可視化
されているかどうかです。

やるべきことの答えは
会社のなかにあります。

評価制度がある会社であれば、
この数字を実現するための指標が
評価シートの中に書かれている、
かどうか、ということになります。

お読みいただきありがとうございました。
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