![](https://www.suzukey-stone.com/wp-content/uploads/2018/10/5beb1cd6fccd23dc080b3cdfe410d1d1-640x400.jpg)
第961号
同一労働同一賃金の導入によって、
正社員と有期、パート社員との不合理な
待遇格差が禁止されました。
![](https://www.suzukey-stone.com/wp-content/uploads/2021/04/1772649douitu-300x188.jpg)
その結果、各種手当を見直すきっかけ
となり、支給の主旨や目的が明確でない
ものを廃止したり、違う目的の手当に
変更することを考えている会社から、
ご相談をいただくことがあります。
気を付けなければならないのは、
手当の見直しは”誰にとっても
不利益にならない”という設計は
難しく、
頭では理解できても、いざ自分ごと、
となると、なかなか納得いかない
こともあるものです。
「不利益変更」で揉めないように、
慎重に丁寧に、対応していくことが
必要です。
—————————————————————————-
賃金規定を会社に見せていただくと
本来の支給目的とは違った名目で
支給されている手当が少なくありません。
![](https://www.suzukey-stone.com/wp-content/uploads/2018/04/6eb5583391c33d781c54d858995732c4_s-300x200.jpg)
手当の整理をしたいけれど、不利益変更
に該当するのではないかと考えると、
なかなか決断できないとうかがいます。
この不利益変更とはどういうことを言う
のか、というと
労働契約法8条では
「労働者及び使用者は、その合意により、
労働契約の内容である労働条件を変更することができる」
と規定されています。
そこから言えるのは、
労働者の同意なく、使用者が賃金等の
労働条件を一方的に切り下げるのは無効
ということが、大前提になっていると
考える必要があります。
実際に、従業員から、
手当が減少したことは不合理であり
無効。と主張して、
差額等の支払いを求める裁判例も
あります。
人件費を下げたいという考えからだけ
の手当の見直しだけでなく、
会社としても、なかなか求人が
難しいなかで、
女性や若者など、あらたな人材の確保や
定着のために、
昔からの精皆勤手当を、保育手当
だったり、住宅補助手当にすることで、
求人の応募者も増やしたい、と考える
気持ちもあります。
![](https://www.suzukey-stone.com/wp-content/uploads/2019/08/c5536eb89c54858b25c68d6b5a8a23b9-300x225.jpg)
国の方針をみると、
「年収の壁・支援強化パッケージ」のなかで、
「配偶者手当」の見直しを提言しています。
https://www.mhlw.go.jp/content/11200000/001158785.pdf
![](https://www.suzukey-stone.com/wp-content/uploads/2023/12/ea5875aca41e6893734e11387d20a0f4.png)
夫の会社の配偶者手当をもらうため、
他社で働いている妻が、手当受取りの
収入基準を超えないように働き控える
という状況をなくすために、
総額は変えずに、配偶者手当を縮小or廃止して
あらたに子供手当に変更したり、基本給に上乗せ
して増額するという事例を
『賃金制度の見直し」という
”制度変更”のなかの手順のひとつ
として紹介しています。
今の手当は見直したほうがよいと
わかっていても、どうやって
従業員の反発や法的リスクを軽減
するか、が課題です。
従業員の同意なく一方的に手当を
廃止するというのは、一番避けたい
ところですから
見直しの影響をうける従業員に
丁寧な説明を行うことは必須です。
納得していただき、できれば、
全員の同意をもらいたいところ
です。
![](https://www.suzukey-stone.com/wp-content/uploads/2018/08/c47d7a21cdb9a974df82eef105477bec-300x300.png)
法的リスクの軽減としては
これまでの裁判で手当の廃止が
不利益変更でなく合理的と判断
された事例(参考:山口地裁R5.5.24判決)から、
裁判での着眼点をみてみると
・手当変更の目的が合理的理由かどうか
・不利益の“程度”で判断
総賃金原資における減額率がどの程度か
手当が減少する人数は何人で、どれくらいの減額なのか
減額が一番高い従業員の減額率はどの程度か
・手当を廃止や縮小することに合理性があるか
・新たに付与する手当に合理性があるか、目的に沿っているか
・激変緩和措置の設定(少なくとも1年くらいか)
これらのことを手当の改廃時には検討
してから行う必要があります。
そして、賃金減額、コスト削減等が
目的ではないのであれば、
個々の従業員については不利益に
なる方が出るとしても、
人件費総額がほぼ変わらないように
(下がらないように)設計することが、
法的リスクの回避の視点からも、
従業員のモチベーション維持や
信頼を失わないためにも大切です。
お読みいただきありがとうございました。
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