今だからこそ 解雇の手順を押さえておきましょう

第629号鈴木早苗ブログ

新型コロナウイルスの影響で
解雇や雇い止め、あるいは、
その見通しのある労働者が
1万人を超えたことを厚生労働省が
5月22日、明らかにしました。

5月に入ってから7,000人増え、
約3倍に なっており、雇用情勢が
急速に悪化しています。

公表された数字は、厚生労働省が
全国の労働局やハローワークを通じて
把握した人数なので、実際の解雇・雇い止めは
これ以上に多いとみられています。

厚生労働省は解雇・雇い止めにあった人のうち、
非正規雇用が何人いるかを把握してこなかった
そうです。

今後は非正規の雇い止めが急増すると
予測されるため、加藤厚生労働大臣は、
22日の記者会見で、非正規と正規、
それぞれの動向が 分かるような調査を
するよう指示したと言います。

新型コロナウイルスによって、
融資も助成金も補助金も、
支給基準や審査が緩和
されている(と、感じる)ことから、

普段は、解雇は難しいと思っている会社も
「新型コロナウイルスならしょうがない」

だから、解雇の要件も
若干、ハードルが低くなるのではないか、
と思う方がいらっしゃるかもしれません。

それほど、大変な状況
ということではあるのですが、

やっぱり解雇は、
簡単ではありません。

民法上、従業員が承諾しなくても
会社は従業員を解雇することができる、
としています。

それを労働契約法等の法律により、
従業員を保護する措置が講じられていて

解雇が客観的に合理的な理由を欠き、
社会通念上相当と認められない場合は、
労働者をやめさせることはできないと
規定しています(労働契約法第16条)。

解雇するには、社会の常識に照らして
納得できる理由が必要です。

新型コロナウイルスは
その理由にならないの?
ということですが、

問われるのは、
どういう手順を踏んだのか、です。

不況や経営不振などの理由により、
解雇せざるを得ない場合に
人員削減のために行う解雇を
「整理解雇」と呼びます。

整理解雇の有効性は
以下の4つの要件から
判断されます。

現在は、すべて満たす必要は
ないという判例も多いのですが、
このような手順を踏む必要が
あるということに、変わりは
ありません。

1.人員削減の必要性
人員削減措置の実施が不況、経営不振などによる
企業経営上の十分な必要性に基づいていること

2.解雇回避の努力
配置転換、希望退職者の募集など他の手段によって
解雇回避のために努力したこと

3.人選の合理性
整理解雇の対象者を決める基準が客観的、合理的で、
その運用も公正であること

4.解雇手続の妥当性
労働組合または労働者に対して、解雇の必要性と
その時期、規模・方法について納得を得るために
説明を行うこと

上記2で挙げたように、
正社員の解雇に踏み切る前に
『解雇回避の努力』を行ったか?
ということが大切です。

具体的には、

(1) 諸経費の削減
(2) 役員報酬の削減
(3) 新規採用の見送り
(4) 配置転換
(5) 一時帰休(労働者を一時的に休業させる)や
    今回であれば雇用調整助成金の申請
(6) 残業規制
(7) 賃金・賞与のカット
(8) 希望退職者の募集あるいは退職勧奨

すべて実行が要件ではありませんが
これらの回避義務を実行し、
その他、資金繰り支援等に関する
検討も考慮して、

そのうえで、業務縮小や人員整理に
踏み切るか否かの判断をすることです。

整理解雇にあたっては

正社員の解雇を検討する前に
有期雇用の雇止めを行うというのが
これまで原則とされてきました。

2020年4月1日施行の
『パートタイム・有期雇用労働法』
第9条(差別的取扱いの禁止)では

事業主は、
職務の内容、職務の内容・配置の変更の範囲
(人材活用の仕組みや運用など)が
通常の労働者と同一のパートタイム労働者
については、パートタイム労働者であることを
理由として、その待遇について、差別的取扱い
をしてはならない。
と、規定しています。

いわゆる「同一労働同一賃金」で
均等待遇を求める根拠条文です。

よって、
整理解雇の対象者を選定する場合には、
呼称がパートだからというだけで
正社員より先に雇止めができるものではない。
ということです。

解雇は、法律的に
手順をふまなければなりません。

簡単ではないだけに

今を、どう乗り切るか
と、同時に、
経済がもとに戻ってくる
例えば1年後、

自社の状況も見据えたうえで、
判断していただければと思います。

厚生労働省 パート・有期労働ポータルサイト
https://part-tanjikan.mhlw.go.jp/reform/

お読みいただき、ありがとうございました。

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