転勤は命じるだけでよいのか

第1074号

毎回最後の10分程度観るドラマがある
のですが、
その週は、共働き夫婦の夫の転勤が取り
上げられていました。

今の話の流れでは、妻が夫の転勤先について
いくために退職するという展開なのですが、

少し前なら、普通の展開に思えたことが、
今は、「あれっ」と違和感を覚える方も
多いのではないかと思います。

家族帯同で転勤するのか、単身赴任かの
二択しかないのでしょうか。

すでに家族のモデルは、専業主婦の家族
から共働き夫婦の家族に変化しています。
———————————————-

今なら、夫婦のいずれかがテレワークが
できるのではないか、という声が若い人
あたりから、上がってきそうです。

そもそも転勤は拒否できるのかと言えば
一般的には、会社が業務上の必要性を
理由に転勤を命じる場合は、従業員は
それに従う義務があります。

よって、拒否した場合は、解雇が認められる
可能性もあります。

もちろん、不当な異動命令は「人事権の濫用」
にあたり、
異動の拒否が認められる可能性もありますが
正当な理由が必要です。

少なくとも会社は、就業規則に
^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^
・会社は、業務上必要がある場合に、
労働者に対して就業する場所及び従事する
業務の変更を命ずることがある。
・労働者は正当な理由なくこれを拒むことはできない。
^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^
<令和5年版厚生労働省モデル就業規則より>

このように規定化して明確にしておきたい
ものです。


ところで、現代の問題は、
異動を告げると若手社員が辞めていったり、
女性は大きな戦力であって、

夫の転勤を理由に戦力を失うリスクを
考えなければなりません。

ドラマの当事者(女性)も今は家族が
大事だから、離れたらバラバラになる、
という理由で、自分が退職することを
選択しました。

自分で選んだことだから。
私生活には踏み込めない。

会社としては、確かに「人物」に
焦点を合わせるとそうなります。

30~40歳代の共働きの割合が7割
を超え

夫婦ともに正社員という割合は、
8割を超えている統計を見ると

異動を命じることだけでよいの
だろうか、と考えてしまいます。

家庭ごとに事情もあって、確かに
会社ができることには限界はあり
ますが、

4月の育児介護休業法の改正で
介護に直面した旨の申出をした
従業員に対する
個別に会社の規定を周知し、

意向を確認することが義務付けられ、

従業員が40歳程度になったら、
会社としてどういう支援ができる
のか、情報提供することが
義務付けられました。

勿論、無用な離職を防ぐ、労働者への
配慮ではありますが、

会社視点で考えれば、異動や配置を
スムーズに行い、生産性を下げない
ためにも、有効に使える内容だと
考えられます。

10月の改正では、出産の申出をした
従業員から3歳未満の子を養育する
従業員に対しても、

同様の周知、意向確認が義務付けられ
ます。

これらの流れは、
女性のキャリア形成を止めない、
あきらめさせない、
という視点ともつながり、

この視点を持っているかどうかは、
これから重要だと思います。

平成11年の帝国臓器製薬事件では、
最高裁判決文のなかで、妻の帯同
について、

——————————————–
多少条件が悪くなるとしても、従前の
仕事に代わる職を探すことが不可能
とまではいかない
——————————————

と述べるにとどまっています。

配偶者の転勤によるダメージまでは
当時は思いが及ばなかった可能性が
あります。

ですが、少しずつ、考慮する方向に
向いてきていることも事実で、

会社としては、
転勤を伴う異動命令を従業員は
受けるもの、という一択ではなく、

配偶者が単身赴任して、ひとりで
家事を担うことになった(ワンオペ)
従業員への配慮や、

家族帯同で異動するため退職する
従業員の再雇用制度の制定など、

実際に対象者が出てきてから対応
するのでなく

いずれはこういう問題が出るので
あれば

今から出来る配慮の策の検討を行う
ことで

自社の実情に応じた、柔軟性のある
対策がルール化できるのではないか
と思います。

お読みいただきありがとうございました。
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