
第1077号
日経新聞朝刊の法税務のページに
『基本給の格差「不当」判決』という
記事がありました。
これは、働き方改革の大きな柱である
「同一労働同一賃金」に関連した判決が
2025年2月京都地裁で出たものを指して
います。
2019年から働き方改革に関連する法律
が順次施行され、2021年4月、すべての
企業で適用されました。

企業にとっては、働き方改革は
進行中の課題です。
いよいよ基本給についても判決で
判断基準を示し始めました。
今、あらためて、自社の対応が適切か
どうか見直すタイミングにしていただけ
ればと思います。
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今年は5年に1度の年金の財政検証
の年で、そちらに焦点がいっていま
すが、
来年は労働基準法では法改正が行われ、
同一労働同一賃金も施行から5年
経過したことを受け、
2027年に向けて「同一労働同一
賃金」のルールに関する改正を
視野に、有識者の間で議論され
始めています。
パートタイム・有期雇用労働法の
見直しも検討されており、
非正規雇用労働者の待遇改善が
焦点となっています。

これまでに、最高裁は、
各種手当については、一定の判断の
枠組みを、
2018年にハマキョウレックス事件の判決や
下記の事件で明示したのですが
最高裁の各種手当の判断例
https://jsite.mhlw.go.jp/fukuoka-roudoukyoku/hourei_seido_tetsuzuki/koyou_kintou/_00745.html
基本給の格差については、明確に
不合理という判断はしてきません
でした。
2023年に「名古屋自動車学校事件」で
最高裁が基本給について初めてとも
言える判断基準を示して、高裁に
差し戻しました。
正社員と非正規雇用、それぞれの
基本給の趣旨目的を客観的具体的な
役割の相違について検討していない
ということが理由での差し戻しで、
逆に言えば、そこが最高裁の判断基準
だということになります。
この最高裁の判断に答える判決のように
見えるのが
2月の「京都地裁の京都明徳学園事件」
の判決です。
正規教員の基本給(年齢給、職能給、
功労報酬の要素が含まれる)の
性質及び支給の目的を検討し、
常勤講師と専任教員の格差は不合理
だと認定しました。
地裁の段階であり、確定したわけでは
ありませんが、
基本給について明確に答えられる企業は
どれくらいあるかと考えてみると、
まして、その違いが合理的だと説明
できる会社は、と考えると、
多くはない、と言わざるを得ません。
基本給に限らず、賞与、退職金に
いたっても
一体それはどういう性質や目的が
あって、正社員と非正規雇用で
それがどのように支給が異なるのか、
説明できるようにしておかなければ
ならなくなる日は、やってきます。
だから、
人事評価制度を作っておけば安心。
とは、言い切れません。
勿論、基本給について説明できるか、
という点が大切だと考えると
説明できるなにがしかのルールが
必要なことは間違いありません。
「社員に説明できる制度を作る」と
おっしゃる会社は多いのですが、
それは、同一労働同一賃金の視点
からも説明できるようにしておか
なければならないということです。
どうしたら賃金が増えるのか、の
前に、
会社は何に対して賃金を支払うのか
を明確にすることが大切です。

たとえば、固定給部分はすべて
「基本給」という言い方をしている
会社もありますが、
「職務給」「職能給」「成果給」「役割給」
というような、表現をしている会社も
あります。
表現はいろいろあっても、
その支払い方にはどういう意味が
含まれているのか、
例えば、職能給と年齢給を合わせて
基本給として支給する形態なら
その割合には、会社の考えるバランスが
あるはずだと思います。
単に、等分して支給していて、その
割合に意味がないなら、支給する意味
を考えていただき、
結果として割合を見直していただく
機会にもなればと思います。
たとえば、非正規雇用に職能給のみを
支給しているのであれば
その職能給や正社員に支給される
年齢給の趣旨、目的に照らし合わせて
支給、不支給の意図に合理性があるか
どうかが、今後は裁判でも検証されて
いく流れだと思います。
自社に人事評価制度があっても、
それで説明できるように明文化されて
いるか、検証してみていただければと
思います。
お読みいただきありがとうございました。
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