均等待遇と均衡待遇

第137号

今日は社会保険労務士として押さえておきたい
ハマキョウレックス事件、長澤運輸事件の
最高裁判決を受けて開催された

今後、企業はどんな賃金制度を作ればよいのか、
という人事制度関連の1日研修を受講しました。

今日は社会保険労務士の直球の内容になります!

研修の中身自体は、残念ながら
お伝えできないのですが。

受講して気づいたこと。
是非お伝えしたいことを2回に分けてお伝えします。

前半の講師は、あおば社会保険労務士法人の
代表社会保険労務士 藤原英理先生。
人事制度づくりの仲間でもあります。

今日は判決のポイントにもなった
『待遇格差』について最高裁は
どう判断したのかをお伝えして、
明日は実務対策についてお伝えします。

今日明日の内容は、働き方改革関連法案のなかの
『同一労働同一賃金』(大企業は2020.4月から導入
中小企業は2021.4から導入)
につながっていく内容です。

2つの最高裁判決を個別に見ていきましょう。

ハマキョウレックス事件
正社員と契約社員の待遇格差についての判決です。

物流会社「ハマキョウレックス」の契約社員の運転手が
「住宅手当などが正社員にのみ支給されるのは不当だ」
と訴えた裁判。

今回の最高裁の判決では、
地裁、高裁でも格差が不合理
と判断された通勤手当などの4
つの手当に加え、皆勤手当についても、
正社員に支給していながら契約社員に
支給しないのは「不合理」と判断

その一方、住宅手当については、
正社員と契約社員の間に転勤の有無など
差があることを踏まえ、契約社員に支給しない
のは「不合理といえない」と原告の訴えを退けました。

長澤運輸事件
正社員と定年後再雇用社員の待遇格差についての判決です。

.運送会社「長澤運輸」を定年退職後に
再雇用された運転手3人が
「定年前と同じ仕事なのに給与が
引き下げられたのは不当だ」と訴えた裁判。

今回の最高裁の判決では、
正社員と非正規社員の賃金格差が不合理かどうかは、
「賃金総額の比較のみではなく、
賃金項目の趣旨を個別に考慮すべき」
とする判断を示しました。

その上で、精勤手当については
「相違は不合理である」と支払いを命じた一方、
その他の基本給や大半の手当については
、3人に近く年金が支給される事情などを踏まえ、
格差は「不合理ではない」として請求を退けたものです。

実はこの2件は
正社員と契約社員、
正社員と再雇用社員の間で、
仕事の内容に差をつけるのが
難しい『運輸』の職種ということ。

2社ともに、これまで
正社員とその他の雇用形態の社員との
区別化に対応していた、いわゆる優良企業です。

にもかかわらず、最高裁までいくような事案となりました。

この判決から学ぶことは
働き方改革関連法の
『同一労働同一賃金』につながる
” 不合理な待遇格差 ” をなくすことが
企業に求められるということです。


「均衡待遇」(前提となる状況に相違があるのであれば、
その相違に応じた待遇とすること)

①職務内容(業務の内容+責任の程度)
②職務内容・配置の変更範囲(人材活用の仕組み等)
③その他の事情の相違
①~③が正社員と違う場合、不合理な待遇差は禁止

「均等待遇」(前提となる状況が同一であれば、同一の待遇にする)

①職務内容(業務の内容+責任の程度)
②職務内容・配置の変更範囲
①~②が正社員と同じ場合、同じ待遇が求められる

〇ハマキョウレックス事件

正社員と契約社員は
①は同一
②は同一でない

よって、
均衡待遇は必要

という結果になりました。

最高裁の判断として、
各種手当について差がつくのは違反とされたのが、

“無事故手当、作業手当、給食手当、通勤手当、皆勤手当”です。

ただ、手当など均衡待遇に違反していて、
不合理は認められない(労働契約法第20条)としても、

正社員就業規則と契約社員就業規則が別個に存在する”
ので、正社員就業規則の定めが契約社員に提供されるとは
判断できないとされました。

〇長澤運輸事件

正社員と再雇用者は
①は同一
②は同一
③は同一ではない

③の“その他の事情”については、
団体交渉など労使で密に話し合っていることを
考慮されました。

よって
均衡待遇は必要

という結果になりました。

給与、住宅手当・家族手当、役付手当、賞与については違反なし。
精勤手当が再雇用者に出ないのは違反と判断しました。

定年後どこまで給与は引き下げられるのか
については争点とされず、
“各項目ごとに判断する”にとどまりました。

ただし、高裁では減額2割強であれば
不合理ではないとしていることから、
今後の他の事案の判例で、
どういう判断が大勢を占めていくのかが
気になるところです。

『同一労働同一賃金』の難しさは、
法律で定められたものではないことです。
よりどころは、均等待遇、均衡待遇です。

各企業は正社員と非正規社員の区別化という
実務対応が必要になります。
どんな対策をとればよいのでしょうか。

それは、明日お伝えしたいと思います。

お読みいただき、ありがとうございました。

つまるところ「人と組織」
社長の想いを語りなおして
強み×8割の社員が育つ仕組み×関係性をデザインする
鈴木早苗でした。

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